コロナ19事態により、2月末~5月5日まで休館となっていたソウル市の博物館は、5月6日より定員制&事前予約制にて開館しました。

平和と慰労のメッセージを伝える作品(彫刻家:崔平坤)
5・18民主化運動40周年を記念する特別展示「五月、その日がまた来れば」

大韓民国歴史博物館は場所柄、もともと警備や職員が多いところですが、コロナ19事態への対応も、他の博物館と比較すると厳重。ロビーの通路は一方通行になり、感染を防ぐため、受付にはアクリル板の仕切りが作られています。まず入口で手指の消毒。予約の有無を確認、コロナ19に関する質問用紙に回答、連絡先と氏名を記入・提出し、入場できます。
*新規確定診断者の増加により、6月2日現在「生活の中の距離」維持強化のため、大韓民国歴史博物館は再び臨時休館中です
3階企画展示室「五月、その日がまた来るなら」
5・18光州民主化運動
1980年5月18日から5月27日まで、光州市民と全羅南道民が中心となり、民主政府の樹立、全斗煥保安司令官を頂点とする新軍部勢力の鎮圧に対抗し、退陣及び戒厳令撤廃などを要求し、死を覚悟の上で民主主義を勝ち取るために抵抗した民衆を戒厳軍が武力鎮圧した歴史的事件。

全南大学正門のデモ隊と警察
1980年5月、政治関与の意図を示す新軍部の動きに対する反発で、全斗煥退陣を要求する学生デモが発生した。

戒厳軍の軍服と軍靴、鎮圧棒
1980年5月17日から27日まで、10日間にわたる光州民主化運動では、死者166人、行方不明者54人、負傷後遺症死者376人、負傷者は3,139人にのぼった。

当時の新聞

上:光州に集まった記者たち / 下:韓国日報事務所
事件後、全斗煥氏は大統領に就任し、8年にわたって権力を保持した。当時は言論の弾圧で記事化されなかった、記者たちが残した取材手帳とメモなど。
光州の5・18民主化運動は40年が過ぎた今も、すべての真相は明らかになっておらず、今年5月「5・18真相究明調査委員会」が本格的な活動を始めました。

光州での10日間の出来事を再現するジオラマと映像
抗争はもはや学生たちのデモではなく、市民に広がり拡大していきます。

民族民主化聖会に参加した全南大の教授たち
当時、小学生、高校生、大学生、宣教師、主婦だった光州市民が、当時の状況を書きつづった日記16点の展示。現代は日記としてブログを書く人も多く、ノートに日記を書く人は少なくなったのでしょう。ウェブの記事は修正、更新されますが、ノートに書かれた日記や新聞は歴史を語ります。

光州市民の日記16点
40年間保管されていた日記は、すべて驚くほどきれい。市民が残した記録は、これまで光州を離れたことがなく、ソウルでは初めて公開されたそうです。

五月のオモニ(お母さん)何の対価もなく、おにぎりや飲み物を分け合い、お互いを激励しあった
平凡な市民たちにとって、民主主義、民主化とは、実際、食べて生きることとはあまり関係ない、遠い遠い話だった。しかし逆説的にも、平凡な市民たちが血を流し、銃を狙い、こっそりご飯を分け合ったその年5月のすべての瞬間が、今日の大韓民国の民主主義を象徴するものになった。
大韓民国歴史博物館「오월 그날이 다시 오면」
いまの韓国は国民が主役であり、政治に不正や犯罪があれば糾弾され、その場にとどまることはできない。40年前の5・18民主化運動は、単なる光州の事件ではなく、韓国の歴史であり、現代史において大きな意味を持つのは間違いありません。
ユネスコ世界記憶遺産
2011年5月には5・18光州民主化運動に関する記録がユネスコ世界記憶遺産に正式に登録されました。
5・18民主化運動をモチーフにしたアートや出版物
![日本人画家 富山妙子氏の版画[光州のピエタ]](http://sinnara9.com/wp-content/uploads/2020/06/Gwangju-May-18-13-700x525.jpg)
日本人画家 富山妙子氏の版画「光州のピエタ」

布にかかれた「パクスンヒの旗」(안한수:1980年代)

当時の市民にとって信じられない事件

日本や世界各国で発行された雑誌や新聞など
1階企画展示室「政府記録の中の5・18」
国家記録院が所蔵する、5・18民主化運動関連の政府の記録物からなる展示。
国防部と光州東区庁で製作した日誌、収拾状況の報告、被害届の受付状況など世界記憶遺産10点余りが初めて原本のまま展示されている。ほかにも、国軍機務司令部が整理・保管していた当時の写真も公開されている。(一階の展示は2020年6月7日まで)

戒厳司令官の警告文

5・18民主化運動記念式典の歴代大統領演説
タッチパネル操作で、これまでの5・18民主化運動記念式典の歴代大統領演説を見ることができる。
文在寅(ムンジェイン)大統領 5・18光州民主化運動40周年記念式典 演説
ところで文在寅大統領は、学生時代に軍事独裁政権への抗議活動に参加した経歴を持っています。
尊敬する国民の皆様、光州・全南市・道民の皆様
40年前の光州は、崇高な勇気と献身によって、この国の主人が誰であるのかを見せてくれました。私たちは光州を思い浮かべながら、自ら正義なのかを問い返し、その問いでお互いの手を取り合いながら、民主主義への勇気を失いませんでした。
世の中を変える力はいつも国民にあります。
光州を通じて私たちはお互いの心をより多く集めて、もっと多くを分けあい、より深く疎通することが民主主義だということを経験しました。私たちに刻印されたその経験は、どんな困難の前でもいつも最も大きな力になってくれます。もはや韓国は、政治・社会における民主主義を越え、家庭、職場、経済における民主主義を実現しなければならず、分かち合い、協力し、世界秩序のために再び、五月の全南道庁前広場を思い出さなければなりません。
それがその日、道庁を死守した死者の呼びかけに、生者が真に答える道です。一部のみ抜粋:文在寅大統領「5・18光州民主化運動40周年」記念演説
また、文在寅大統領は演説の中で「国家暴力の真相は、必ず明らかにしなければなりません」とし「処罰が目的ではありません。歴史を正しく記録することです。今からでも勇気を出して真実を告白するなら、むしろ許しと和解の道が開かれるでしょう」と語りました。
歴史回廊
大韓民国歴史博物館には、外に歴史回廊と呼ばれる通路があり、企画展示はだいたいこちらにも展示があります。

光州の道路が再現されている
当時の鮮明な写真と、大小数台のディスプレイからは当時の映像などが流れます。

盧泰愚(ノテウ)元大統領、全斗煥(チョンドゥファン)元大統領


大韓民国歴史博物館の前庭「歴史広場」
ソウルで5・18民主化運動をテーマにした大規模な展示が開催されるのは初めて。40年の時間がたち、韓国では、市民が当たり前に民主主義を叫べるようになりました。
韓国がどれほどの犠牲と時間をかけ現在の民主主義を勝ち取ったのか。ほんの一面ですが、垣間見ることができます。
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