大韓民国歴史博物館の企画展示『音、歴史の証人(소리, 역사를 담다)』は、歴史的瞬間と社会の変化をとらえた「音」に着目した特別展示。現代は一般人もカメラや録音機能のあるスマホを持ち、音声や映像を簡単に残すことができるようになったけれど・・・ここでは過去の貴重な音声を聞くことができる。
一人ひとりの声が集まって爆発する広場での叫び、緊迫した状況、凄惨な事件・事故の瞬間、禁止され声に発することができなかった歌、啓蒙と信念のメッセージ、馴染みのある日常の記録など、本展では多様な音の記録を通じて韓国の近現代史に込められた物語をあらためて振り返ります。
引用:大韓民国歴史博物館
たくさんの引き出しと扉。開くとたびたび耳にする聞きなれた音やなつかしい声が。
悲しい栄光
ナチス政権下のドイツで開催されたベルリンオリンピックは、いまからほんの84年前。
1936年8月の2週間、夏季オリンピック大会の開催中、アドルフ・ヒトラーのナチス独裁政権はその人種差別主義、軍国主義の特性を隠蔽していた。ナチス政権はオリンピックを利用して、平和的で寛容なドイツのイメージで多数の外国人観客や報道記者を惑わせた。
出著:米国ホロコーストメモリアルミュージアム
https://www.ushmm.org/
日帝強占期(日本が植民地支配した時代)の1936年、日本代表としてベルリンオリンピックのマラソン競技に出場し、当時世界新記録で「日本」にマラソン初の金メダルをもたらした学生、孫基禎選手。ここで聞くことができるのは、ドイツ放送の中継音源と、帰国後録音された、優勝記念レコードの孫基禎選手の朗読音源。
事前に作成された原稿の朗読を強要される孫基禎選手の声。
「・・・わが国の日章旗が私を応援してくれるのが見えました 」「この勝利は決して私個人の勝利ではなく、すべて私たち日本国民の勝利だと・・・」
ここで躊躇し、孫基禎選手が一瞬沈黙すると「크게・・・크게 읽어(大きく・・・大きい声で読め)と催促する別の声がする。この声も録音され、残されている。
「日本国民」にされ、日章旗をおしつけられた日帝の植民地支配期の、厳しく抑圧された雰囲気をうかがい知ることができる貴重な音声。
↓この展示と同じ音声はこちらからも聞くことができます。
「私は孫基禎です。私は勝ちました。2時間29分19秒2のオリンピック新記録でした」「午後6時15分、私はハーパーとナム君とともに表彰台にあがりました。荘厳なわが国の国歌(キミガヨ)が厳粛に私の耳に鳴り響きました。このときの喜びを私は一生忘れることができないでしょう」
日本を褒め称えるインタビューを強制された孫基禎選手。
「祖国がない民は犬と同じだ。日章旗があがりキミガヨが演奏されることがわかったなら、私はベルリンオリンピックで走らなかっただろう」
表彰台に立った彼は、月桂樹を持ち日章旗を隠した。優勝直後、孫基禎がベルリンで友人に送ったはがきには、ただ「悲しい!!?」とだけ書かれていた。
孫基禎は選手としての名誉だけではなく、
祖国の栄光まで日本に奪われなければならなかった。 抜粋:EBS製作 歴史チャンネルe 悲しい優勝(孫基禎)
EBS
EBS=韓国教育放送公社は、大韓民国の公共放送。学校教育を補完し、生涯教育を支援するために運営されている。
独立を願う声、解放の喜び
6.25戦争(韓国戦争)以降
さまざまな音声を伝えた機器
国内最初のテレビ、ラジオ、電話などの展示。
電話交換員になる学院(専門学校)の入学者を募集する広告。時代の流れでなくなってしまった職業。
1970年代の公衆電話ボックス。
声(音)の劇場
20世紀初めから現代までの特定の事件や記念日などの歴史と、海や草原、雨などをあわせた約15分の映像の上映。14時以降、30分ごとに上映。
自分自身が動いて海の中に沈むような感覚になったりもし、幻想的につくられている。
国の独立を願う声、6.25戦争、軍事クーデターの演説、70年代の平和市場、離散家族の再会からソウルオリンピックなど。韓国の近代史の歴史的場面の写真とあわせ、音・声を聞いてみると当時の様子が目に浮かびます。
大韓民国歴史博物館は、名前の通り大韓民国の歴史(大韓帝国期~日帝強占期、6.25戦争、近代)の展示に限られている。韓国の近代史の始まりは暗く悲しいけれど、レコード、ラジオ、テレビ放送などの音源から、どんどん明るさを取り戻していく姿を知ることができます。
Address
大韓民国歴史博物館
ソウル特別市 鍾路区 世宗大路198
서울특별시 종로구 세종대로 198
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