世宗大王の3つの顔

2020年3月21日

ハングルをつくった王様として知られる世宗セジョン大王。業績に対する尊敬の意味をこめ世宗セジョン「大王デワン」と呼ばれる。韓国の 1万ウォン紙幣の肖像画モデル。

ドンシク

ソウル市内には3か所、世宗大王の像があるよ

1.世宗大王記念館（1968年）

ソウル市内の3つの像のうち一番最初、1968年に制作された。徳寿宮トクスグンに建てられたが、2012年東大門区清涼里チョンニャンニにある世宗セジョン大王記念館に移された。

世宗大王記念館のセジョン大王

目つきが鋭く、1万ウォン紙幣の優しい顔とは違う。50代の世宗セジョン大王をイメージしているそう。

世宗大王記念館の世宗(セジョン)大王銅像

この世宗大王記念館の銅像は1968年制作なので、1973年に制作された政府標準遺影は参考にされていない。

標準遺影とは

韓国で崇められる歴史上の人物の肖像画が様々な形で乱立することを防止するため、文化体育観光部長官が指定した影像のこと

世宗大王記念館の前庭

2.ヨイド公園（1998年）愛国先烈先祖建立委員会

1,000ウォン札の肖像モデル、南山公園の退渓李滉（テゲイファン）像と同じく、愛国先烈先祖建立委員会によって建てられた。

汝矣島(ヨイド)公園は最高の散策スポット

おおきい

20～30代に見える

ひげが少なめなせいか、若々しい顔。文人としての世宗大王だそう。

台座にはやはりハングル

光化門に世宗セジョン大王像を建てることが決まった際、なぜ莫大な費用（27億ウォン）をかけて新しく像をつくらなければならないのか、この汝矣島ヨイド公園の像を移動させてはどうか、という議論があった。

汝矣島(ヨイド)公園の世宗(セジョン)大王銅像

高層ビルが立ちならぶ汝矣島(ヨイド)

汝矣島ヨイド公園は人気の散策スポット。銅像の周囲には世宗大王の発明品など、多くの展示物がある。公園は手入れがゆきとどいていて、銅像も、周辺もとてもきれい。でもなぜここに世宗大王像が？という感じはあるかな･･･

チーム長

世宗大王記念館やヨイド公園の世宗大王像はあまり知られてないよね

世宗大王記念館の世宗(セジョン)大王

世宗セジョン大王といえば、現在の 1万ウォン紙幣や光化門クヮンファムン広場の顔を思い浮かべる人が多いと思う。しかし世宗大王の実際の顔を描いた絵は残っておらず、誰にもわからない。目にする世宗大王の絵や像は、朝鮮王朝実録に載っている、世宗大王の学問や業績、人柄に関する記述を参考に、根拠のある推測をして描かれ、つくられたもの。

朝鮮王朝実録

太祖(1392年)から哲宗(1863年)までの25代にわたる472年間の朝鮮王朝の歴史事実を年月日順に従って編年体で記述した歴史書。 1997年10月1日、ユネスコ世界記録遺産に登録された。

3.光化門広場

観光で韓国を訪れる多くの人が足を運ぶ、景福宮前、光化門クヮンファムン広場の世宗大王。

空が青い!!この日は天気が良かった

曇ってる･･･

光化門広場の世宗(セジョン)大王銅像光化門の像を制作したキム・ヨンウォン（김영원）弘益大学教授によると

『世宗セジョン大王の銅像を製作するにあたり参考にした資料は、太祖テジョ、英祖の遺影と世宗大王の政府標準遺影、1万ウォン札のイメージ、そして高宗コジョンと純宗スンジョンの御真オジン、これらの資料を土台にして、世宗大王が民を子供のように愛した愛民精神、それをどうやって復元するかそこに力を注ぎました』とのこと。

tbs TVみなそれぞれ世宗大王銅像

他の王の姿も参考にした、というのは意外なかんじ。でも光化門の像は標準遺影と、1万ウォン札のイメージに近い。

40代のセジョン大王のイメージだそう

画家金基昶（キムギチャン）の描いた世宗大王標準遺影

ヨイド公園と光化門クヮンファムンの銅像制作には政府標準遺影を参考とするガイドラインが提示されたそうですが、違う人が作れば解釈が違う。作家の想像力＆創造力の領域ですね。

	場所	作家
1968年	徳寿宮→世宗大王記念館銅像	彫刻家：김경승（キム・ギョンスン）
1973年	政府標準遺影	画家：김기창（金基昶）
1998年	汝矣島(ヨイド)公園銅像	彫刻家：옥봉환（オク・ボンファン）
2009年	光化門銅像	彫刻家：김영원（キム・ヨンウォン）弘益大学教授

左から世宗大王記念館、汝矣島公園、光化門広場の世宗大王

画家金基昶（キムギチャン）

世宗セジョン大王の標準遺影を描いた画家金基昶キムギチャン（김기창）氏は民族問題研究所

が作成した親日人名辞典に載っている人物。

写真：韓国民族文化大百科

日帝強占期、日帝の軍国主義に同調し、総督府に繰り返し協力し、日本軍国主義を讃える作品を出品したり、強制徴集を鼓舞する連載物に挿絵を描くなどした。

金基昶キムギチャン氏が描いた世宗大王は、画家本人に似ていて、まるで自画像ではないか、ともいわれている。

世宗(セジョン)大王の標準遺影を描いた画家キムギチャン

並べてみてみると、自身に似せて描いたといわれるのもうなずける。

韓国1965年の紙幣の世宗(セジョン)大王

ちなみに金基昶キムギチャン氏が標準遺影を描く前、1965年当時の紙幣の世宗セジョン大王はこんな感じでした。

石窟庵（ソックラム）のような･･･

テヒ

日帝強占期の親日画家が描いた世宗大王の標準遺影は変えるべきだという声も多くあがっていて、青瓦台に請願がだされているのも見つけましたが、まだ回答は得られていないようです。

韓国では日帝が植民地した時代の名残、日帝の残滓を清算するため、撤去や復元作業を積極的に行っています。植民地時代に破壊された道路や古宮の復元作業も、その一環だといえます。

景福宮復元整備事業

1990年の朝鮮総督府の建物の撤去から、2030年完了を目標に、本格的な復元事業が始まった。2010年の時点で1次復元整備事業が完了し、89棟の建物が復元された。しかし破壊・撤去されずに残っていた36棟を含めても125棟、高宗の時代に500余棟あった建物の25％が復元されただけである。（ここまでに1,572億ウォンの予算が投入されている）

光化門広場の地下、世宗(セジョン)イヤギの展示