芸術祭り「三仙遊覧」
ソウル市のサポートにより、城北区と、三仙洞地域にある漢城大学が共同で進行する、キャンパスタウン事業の一環として開かれたお祭り。
お祭りのメイン会場となる漢城大入口駅 噴水広場前にはステージが設けられ、サムルノリ、タルチュム(*)、国楽、民謡、伽耶琴(韓国固有の弦楽器)の演奏、映画OSTを演奏するバンドによる公演プログラムなど、もりだくさんのプログラムでした。
タルチュムとは
朝鮮半島の民俗芸能で、紙やヒョウタンで作った仮面をかぶって行われる民俗芸能のこと。
三仙洞一帯は朝鮮時代の城郭が残る場所で、日帝強占期にできたタルトンネと呼ばれる風景と共存している特別な地域です。
漢城大学のキャンパスタウン事業とは
2017年より、住民、芸術科、漢城大学の大学生たちが、歴史と文化特性、風景を守りながら地域を活性化するため、文化芸術、地域が相互協力し、多様なプログラムを推進している。
具体的な活動内容
・青年文化芸術家の地域連携創作活動の支援
・芸術科の創作空間や住居提供、展示、地域との連携活動の機会を付与
・地域文化芸術の解説者を養成するプログラムなど
ソウル地下鉄4号線の「漢城大入口」駅は、学生街として栄えている「恵化」「誠信女大入口」という駅の間にあります。「恵化駅」周辺は昔ソウル大学があった地域で「大学路」という名前のつけられた地域。韓国で一番長い歴史(600年以上)をもつ成均館大学があり、飲食店や化粧品店、洋服店を始め、演劇、劇場の街として知られ、地元の学生はもちろん観光客にとても人気がある学生街です。
反対側の「誠信女大入口駅」も、映画館やファッションビルがあり、規模の小さい明洞のような雰囲気もあります。夜遅くまで人であふれている繁華街です。その両駅にはさまれた漢城大入口駅周辺は、華やかな大学街という雰囲気はないけれど、飲食店や買い物ができる店は多いです。キャンパスタウン事業で、これからもっと盛りあがることが期待できる地域かもしれません。
歴史文化芸術解説ツアー
恵化門前からスタートし、城郭公園~漢陽都城、駱山公園を散策しながら、漢城大学で解散するツアープログラムに参加しました。
日帝強占期に破壊、撤去された恵化門
ツアーのスタート地点、恵化門は朝鮮王朝が建国された5年後の1397年(太祖5)に城郭と一緒に建てられた門で、漢陽都城に四つあった小門の一つで、東小門ともいう。日帝強占期(日本植民地時代)、日帝は1913年「市街地建築取締規則」を公布し、それにより城郭を撤去して都城内に新しい道を作るとした。電車を通すために、太祖の時代に建てられた恵化門は破壊、撤去された。現在の恵化門は1992年から復元工事によって建てられたもので、本来の姿とは大きく異なるものになった。
漢城大学キャンパスタウン事業団のガイドさんは、城北区に20年住んでいる方。漢陽都城の城郭の歴史、三仙洞の文化、芸術について、道中詳しく解説してくれました。
ソウル市都市再生事業で変化した城郭マウル
城郭マウルは日帝強占期(日本植民地時代)に住むところを失った都市貧民がねぐらとしていたところで、光復(解放)以後、タルトンネ(*)となった地域。
(*)タルトンネとは
タルは月、トンネは町や集落のような意味。タルトンネは、地価が安い場所、山の麓や中腹、人や車が通れない坂に建てられた家が連なる村。タルトンネの語源についてはいろいろな説があるが、月に近い村、月を眺めて暮らす村、という説が主流。 タルトンネという単語はおおむね貧しい町という意味で使われてきた。
長寿マウル 住居環境管理事業【政策概要/ビジョン】
長寿マウルは漢陽都城に隣接し、丘陵の地形の近・現代住居地姿をそのまま残した地域として2012年5月から、住民と村活動家・専門家らが共に長寿村地区単位計画(住環境管理事業)を推進してきており、この地域は、この2013年5月2日、再開発・整備予定区域を解除した地域だ。
この地域は劣悪な住居地の環境を改善するなど、城郭村としての地域特性を保全する住居環境管理事業を完了し、住民中心の村の再生の優秀事例として、ニュータウン/再開発出口戦略に沿った代案を示している。
また、隣接の城郭村の再生として拡散し、活力ある歴史文化都市、ソウルの未来資産形成に貢献したい。
引用:ソウル政策アーカイブ WEBサイト
日帝強占期にできた暗く古いタルトンネの住居環境は悪化した。しかし都市開発で古い建物を壊して高層アパートをつくるより、既存の住宅を改善し、地域の経済を活かそうと、都市ガスを整備、住宅を改良し、暗い横道には近隣アーティストが壁画を描いた。現在は地域住民の努力により、他では見ることのできない漢陽都城の歴史と地域住民の暮らしが共存する町になった。特に梨花洞壁画村は、地域のアーティストによって壁画が描かれ、近年写真スポットとして若者に人気の場所になった。
城郭には説明文のようなものがほとんどありません。下調べなしでは知ることができないことを、ガイドさんが詳しく説明してくれました。機械もない時代に、人の力と知恵でこれほどの城郭を作るとは、驚きの技術です。城郭側をながめると、何百年も昔にタイムスリップしたかのような気分になります。そして反対側には、タルトンネと呼ばれた、城郭マウル。生活感がありながらも雰囲気があり、まさに歴史との共生という言葉が合います。高い丘の上から見る景色は山登りをした後の爽快感を感じるほどです。しかしながら城郭の周りは緩やかな坂道なので、体力も根性もないわたしでも、らくらく登ってくることができました。
長寿マウルから漢城大学キャンパスへ向かうと、突然目に飛び込んでくる朝鮮時代の建物。1868年に建てられた「三軍府 総武堂」は、朝鮮時代の軍事機関だった三軍府の建物。きれいに管理され、となりには公園があります。地元の人以外にはほとんど知られていない場所です。
押し寄せる再開発の波
最近の韓国を知っている人はご存知かと思いますが、韓国は20階~40階ほどのいわゆる日本で言う「タワーマンション」がどんどん建設されています。城北区も例外ではないのですが、城郭が隠れてしまう場所に高層アパートが建つことを地域住民が懸念しているそうです。ガイドさんはこの城北区に20年住まわれていて、城北区の景観、自然を守るため活動をされているとのことでした。
城郭ツアーのゴール地点、漢城大学では、美術学科の学生さんが似顔絵を描いてくれました。
城郭ツアーはスタンプラリー形式。すべてスタンプを押してもらい、漢城大入口駅前の噴水広場に戻り、記念品としてミニ扇風機をもらいました。韓国では数年前からかなり流行っていて、老若男女関係なく夏は所持率高いです。
文化芸術に染まる城郭マウル
漢城大入口駅前の噴水広場では、地域住民や事業者、地域に拠点を置くアーティストたちによる、さまざまな作品、製品が紹介、販売されました。
体験ブースでは城北美術協会所属のアーティストが指導するエコバッグ作りや、お祭りの象徴である風車つくり、アクセサリーや小物などを販売する地域のお店がありました。
多くの人が集まっていた人気の美容体験ブースでは、近隣の美容師や漢城大学美容学科の学生によるネイルケアやヘアカット、まつげエクステなどの施術を受けられました。
韓国では地域のお祭りがたびたび開催されていて、無料で体験、参加できるプログラムがたくさん用意されています。
漢陽都城の600年の歴史と、周辺住民たちの暮らしが共存する城郭マウル。漢城大入口駅から歩いて数分、恵化門の向かい側の階段を上がると、城郭が東大門まで続きます。生まれかわった現代のタルトンネと、600年前の城壁。タイムスリップの気分を味わいながら散策してみてください。
ではまた。アンニョン~
地域の祝祭情報
大韓民国 文化体育観光部
https://www.mcst.go.kr/kor/main.jsp