国楽博物館は、国楽の遺物と楽器を展示した韓国で唯一の国楽専門博物館。
国楽博物館 名人室
名人室は、各分野で名を成し遂げ、伝統舞踊や国楽を継承し守ってきた芸術家たちの活動に焦点を当てた展示室。
日帝の植民地支配と雅楽
李王職雅楽部
日帝強占期(日本の植民地支配期)雅楽生たちに朝鮮王朝の音楽伝統を伝承させるため、雅楽部の傘下に設立した付設音楽教育機関。
上:李王職雅楽部が発行した、朝鮮の楽器を紹介する冊子。日本語で書かれ、65種類の楽器を60枚の写真で紹介している。表紙には「李王家楽器」とある。
下:李王家古典 朝鮮舞楽
昌徳宮仁政殿で撮影された、宮中での歌や踊りを解説する本。
上:五線譜。李王職雅楽部が音楽を楽譜にする作業を行った。
下:1941年に作られた教材。時間表や音楽教科内容など、雅楽生への教育内容が載っている。
存続の危機にあった李王職雅楽隊
上:朝鮮楽器概要(1917年)
李王職雅楽隊は、日帝の植民地支配下で、伝統音楽や舞踊を自主的に受容することができなくなったため、存滅の危機にあった。この朝鮮楽器概要は、日本の宮内庁にむけ、朝鮮の伝統音楽について理解を求めることを目的とし、雅楽師が編纂した本。
下:1915年に作成された、当時李王職雅楽隊に所属した楽員たちの履歴書を記録した本。
日帝は国権侵奪後、最後に残った朝鮮王朝の家族たちを日本の「天皇」の下にある宮内省の傘下機関に置き、管理するために李王職を設立した。 これによって朝鮮王室の音楽をまとめていた掌樂院も李王職制度が公布された直後の1911年「雅楽隊」(1925年雅楽部に改称)という名称の李王職の傘下機関に格下げされた。
日帝は朝鮮王朝を「李王家」に格下げし、朝鮮政府の代わりに朝鮮総督府に国政業務を遂行させたが、王室の存在を完全になくすことはなかった。 むしろ李王家が持っている朝鮮の伝統を日本の伝統と結びつける、内鮮融和の足場であり、モデルとするために残しておく必要があった。
李王職はこのように窮屈な命脈ばかりが残っていたが、祭祀や宮中の祝宴などの昔ながらの宮廷儀式を、おろそかながらもせざるを得ず、「儀式」つまり「礼」には「楽」が伴わなければならなかった。 したがって、千人余りの楽員を従えた、かつての輝かしい掌樂院に戻ることはできなかったが、その真似事をしなければならなかった機関が李王職雅楽である。
出著:民族問題研究所ウェブサイト(https://www.minjok.or.kr/archives/67584)
この名人室に展示されている芸術家たちは、みな日帝強占期(日本の植民地支配期)の1940年代以前に生まれた人たちです。日帝の植民地支配期には、国楽や伝統舞踊の世界にも当然に悲しい歴史があった。
雅楽隊と宮内庁の関係を例えるなら、突然ある会社に、知識も経験もない上司が来て仕事の指揮をとりだしたり、経営を始めるようなもの。ましてや民族固有の伝統芸術の世界でこのようなことが起こったら・・・存続の危機に陥るのは必然といえるでしょう。
ここに公開されている遺物は芸術家の子孫や弟子たちが、国立国楽院に寄贈または寄託したもの。当時の雅楽隊とその音楽について、また当時の伝統音楽を継承する人たちの立場などの情報を得ることができる、貴重な資料ばかりです。
国楽博物館 楽器体験室
楽器の体験ブースは広く、お子さんだけではなく大人も楽しめます。
体験できる楽器はチャングや各種太鼓、鐘、カヤグムなどさまざま。フォトゾーンもあります。
着せ替えがつくれる紙のおもちゃなども用意されてます。
朝鮮時代の祭礼楽器がひととおり展示されている博物館はわりと多いですが、国楽博物館は古代の楽器も展示されています。そのため展示数が非常に多く、それぞれの楽器の歴史についても詳しく説明が書かれています。
また楽器だけではなく、日帝の植民地支配下で存続の危機にもあった伝統舞踊や宮中音楽が、こんにちまで引き継がれてきた歴史を知ることができる、数少ない博物館です。
同じ敷地にある 国立国楽院
国楽博物館は芸術の殿堂の隣、国立国楽院と同じ場所にあります。
国立国楽院では、カヤグムの独奏会や宗廟祭礼楽など伝統的な音楽や舞踊の舞台公演、各種発表会が行われています。
国楽博物館は地下鉄3号線南部ターミナル駅から歩いて10分くらい、無料で見学できるおすすめスポットです。
国楽博物館 Address
서울특별시 서초구 남부순환로 2364
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