ハングルをつくった王様として知られる世宗大王。業績に対する尊敬の意味をこめ世宗「大王」と呼ばれる。韓国の 1万ウォン紙幣の肖像画モデル。
1.世宗大王記念館(1968年)
ソウル市内の3つの像のうち一番最初、1968年に制作された。徳寿宮に建てられたが、2012年東大門区 清涼里にある世宗大王記念館に移された。
目つきが鋭く、1万ウォン紙幣の優しい顔とは違う。50代の世宗大王をイメージしているそう。
この世宗大王記念館の銅像は1968年制作なので、1973年に制作された政府標準遺影は参考にされていない。
標準遺影とは
韓国で崇められる歴史上の人物の肖像画が様々な形で乱立することを防止するため、文化体育観光部長官が指定した影像のこと
2.ヨイド公園(1998年)愛国先烈先祖建立委員会
1,000ウォン札の肖像モデル、南山公園の退渓 李滉(テゲ イファン)像と同じく、愛国先烈先祖建立委員会によって建てられた。
ひげが少なめなせいか、若々しい顔。文人としての世宗大王だそう。
光化門に世宗大王像を建てることが決まった際、なぜ莫大な費用(27億ウォン)をかけて新しく像をつくらなければならないのか、この汝矣島公園の像を移動させてはどうか、という議論があった。
汝矣島公園は人気の散策スポット。銅像の周囲には世宗大王の発明品など、多くの展示物がある。公園は手入れがゆきとどいていて、銅像も、周辺もとてもきれい。でもなぜここに世宗大王像が?という感じはあるかな・・・
世宗大王といえば、現在の 1万ウォン紙幣や光化門広場の顔を思い浮かべる人が多いと思う。しかし世宗大王の実際の顔を描いた絵は残っておらず、誰にもわからない。目にする世宗大王の絵や像は、朝鮮王朝実録に載っている、世宗大王の学問や業績、人柄に関する記述を参考に、根拠のある推測をして描かれ、つくられたもの。
朝鮮王朝実録
太祖(1392年)から哲宗(1863年)までの25代にわたる472年間の朝鮮王朝の歴史事実を年月日順に従って編年体で記述した歴史書。 1997年10月1日、ユネスコ世界記録遺産に登録された。
3.光化門広場
観光で韓国を訪れる多くの人が足を運ぶ、景福宮前、光化門広場の世宗大王。
光化門の像を制作したキム・ヨンウォン(김영원)弘益大学教授によると
『世宗大王の銅像を製作するにあたり参考にした資料は、太祖、英祖の遺影と世宗大王の政府標準遺影、1万ウォン札のイメージ、そして高宗と純宗の御真、これらの資料を土台にして、世宗大王が民を子供のように愛した愛民精神、それをどうやって復元するかそこに力を注ぎました』とのこと。
他の王の姿も参考にした、というのは意外なかんじ。でも光化門の像は標準遺影と、1万ウォン札のイメージに近い。
ヨイド公園と光化門の銅像制作には政府標準遺影を参考とするガイドラインが提示されたそうですが、違う人が作れば解釈が違う。作家の想像力&創造力の領域ですね。
場所 | 作家 | |
1968年 | 徳寿宮→世宗大王記念館 銅像 | 彫刻家:김경승(キム・ギョンスン) |
1973年 | 政府標準遺影 | 画家:김기창(金基昶) |
1998年 | 汝矣島(ヨイド)公園 銅像 | 彫刻家:옥봉환(オク・ボンファン) |
2009年 | 光化門 銅像 | 彫刻家:김영원(キム・ヨンウォン)弘益大学教授 |
画家 金基昶(キムギチャン)
世宗大王の標準遺影を描いた画家 金基昶(김기창)氏は民族問題研究所
が作成した親日人名辞典に載っている人物。
日帝強占期、日帝の軍国主義に同調し、総督府に繰り返し協力し、日本軍国主義を讃える作品を出品したり、強制徴集を鼓舞する連載物に挿絵を描くなどした。
金基昶氏が描いた世宗大王は、画家本人に似ていて、まるで自画像ではないか、ともいわれている。
並べてみてみると、自身に似せて描いたといわれるのもうなずける。
ちなみに金基昶氏が標準遺影を描く前、1965年当時の紙幣の世宗大王はこんな感じでした。
韓国では日帝が植民地した時代の名残、日帝の残滓を清算するため、撤去や復元作業を積極的に行っています。植民地時代に破壊された道路や古宮の復元作業も、その一環だといえます。
景福宮復元整備事業
1990年の朝鮮総督府の建物の撤去から、2030年完了を目標に、本格的な復元事業が始まった。2010年の時点で1次復元整備事業が完了し、89棟の建物が復元された。しかし破壊・撤去されずに残っていた36棟を含めても125棟、高宗の時代に500余棟あった建物の25%が復元されただけである。(ここまでに1,572億ウォンの予算が投入されている)
世宗大王の顔も、いずれ違う解釈で描かれた顔に変わる日が来るかもしれません。
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